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例えばですよ、何処かのジュエリーデザイナーがデザインしたシリーズを何処かの宝石店やメーカー卸が販売したとして、それらの商品の品質はそこそこで値段的にもこなれているのに全く売れなかったとしますね。では売れなかったのはデザインが悪かったのしょうか?
もちろんデザインの善し悪しも大きな要因だとは思いますが、実際問題としてデザインだけが悪かったとは言い切れない側面が有ります。
何故なら宝飾業界を支配する一つの論理が有りまして、それは販売力と言うモノです。そして販売力と言うモノをかいつまんで説明すると「何処の宝石店でも卸屋でも一人位はやたらめったらジュエリーを売る事が出来る人がいる」と言う事実です。で、その人が経営者な場合も有りますし、従業員な場合も有るのですが、宝飾業界と言うモノは良くも悪くも営業成績を中心に回っておりまして、同じ商品を販売しているのにかっこたる差が付くと言う不可思議な現象が存在し、逆に考えれば商品の売れなかった理由の一つに販売力の無さなんて要因も考えられるからです。
で、先ほどのデザインの善し悪しの話に成りますが、僕の昔の知り合いに、そのやたらめったら売る人がいまして、結構大きな宝石店のオーナーに収まった訳です。そして、やたらめったら売る人に共通で有る「一種のカリスマ性」も当然持ち合わせており、なかなか面白いセンスの持ち主だった事も有り、ある日思いつきで数種類のリングを外注して作った訳ですが、そのリングと言うモノが僕達専門家から見ると「アイディアとしては面白いけど実用性に欠きデザインも稚拙で価格も高い」と言う代物だった訳ですが、それらが結構な勢いで売れて行ったのです(笑)。
そして売れる事に味を占めたそのお人はこれまた結構な数のオリジナル商品を作った訳ですが、それらも確実に売れて行きました。もちろんそれら商品の中には「専門外の人(※これまたアレな話ですが売りまくる人材の共通項として宝飾系の専門教育を受けていないとの側面も有り、つまり販売のプロとは呼べてもジュエリーデザインの専門家とは呼べない人が多いので…)が考えたにしてはなかなか良いね」と思えるモノも複数混じっていましたが玉石混合と言う言葉が、そっくり当てはまる感じでして、当時の僕は「普通だったら売れないモノも売ってしまう販売力(※営業力)とは恐ろしいモノだなー」としみじみ感じ入ったと言う次第です。
そして僕が辿って来た道のりのコンテンツに「忙しくてデザインしている暇なんて無かった」などと言う意味不明なワードが出て来ますが、これまた世間の人が聞いたら吃驚しそうな話ですが、たとえメーカーと言えどもジュエリーデザイナーが存在しなくても商売は成り立つ世界でも有りまして、同業他社の製品を参考にすると言えば聞こえは良いのですが、平たく言えば「売れ筋の商品のデザインを模倣する」だけでも僕の所属していた様な中規模のメーカー卸なら十二分に成り立ってしまうのです(※アジア圏などから仕入れた商品なども含めてですが…)。
そしてその模倣した商品でも販売力の有る人や組織にかかれば「いくらでも売れる」訳で、この辺りは「オリジナリティを尊ぶ欧米」と「模倣された商品でも人と同じモノを欲しがるもしくは気にしない(※知らない)日本」の違いでも有り、年間売り上げ高だけを見れば「世界でもトップクラス(※確か世界二位)で有る日本の市場が熟成していない証拠」でも有ります(※1990年代当時)。しかしこの辺りの事情も年々変化していっているとの見方も出来、10年前に通用したやり方が現在では通用しなく成って来ているとも思えますし、全体の何パーセントかは計れませんが「市場の熟成に伴いオリジナリティの有るジュエリーを欲しがる購買層と言うモノも存在するし、増えつつも有る」と僕は思います。
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