14.の引き出し..


さてさて残すところ、コンテンツも後二つと成りました。基本的にデザイナーが、何を考えているのか?などと言う事を正確に文章に落とすには、無理が有るのは承知ですが、ジュエリーデザインを仕事にしたり、仕事上、必要としている人達のバックグランドを紹介したり、僕なりの考えや思いを綴って来ました。で、今回は「ジュエリーデザイナーに必要な頭の中の引き出し」のお話です。

たまに日常生活で出会った面白い形やモノなどをノートなどに書き留めてなんて話を聞きますが、僕的には「そんな事をしている暇が有るなら、その情景や形を頭の中の引き出しにしまえば良いのに」と思います。もちろんノートに書き留める事を否定する訳ではなく、人には様々なタイプが有りますから書き留める事によって頭にインプットするタイプの人もいるとは思います。

で、僕自身の捉え方として「頭の中(※頭脳)は巨大なスープ鍋」だとイメージしています。そしてそのスープ鍋には、今まで生きて来て出会った様々な事柄や情景、モノ、人、感覚などが全てごちゃ混ぜに入っていると思えるのです。そこでそのごちゃ混ぜなスープ鍋からデザインに必要な情報だけを取り出して「引き出しの一杯付いた棚」みたいなモノに有る程度、整理整頓する事が「デザイナーに必要なトレーニング」だと僕は思います。

つまり、どんなに豊かな才能の持ち主でも、今までの人生にて培った記憶と言う名前の膨大なデータを何のトレーニングも無しに取り出す事は、不可能だと思えますし、もちろん世の中には天才などと呼ばれる人達も存在しますが、彼彼女らとて天才ゆえに凡人には計り知れない何らかのトレーニングを日夜しているモノだと思います。

そして、これまた僕の話で恐縮ですが、僕の場合は宝石鑑定の資格取得に始まって制作のコースを終えジュエリーデザインを学び、宝石の研磨、貴金属への洋彫り、そしてまた制作のコースを取りましたが、現時点でこれらを分析すると「宝石の特性を知り、造形への感覚を養い、思いついた形を紙に落とす技法を学び、自ら研磨する事により宝石に潜む美しさと光学的特性を再認識し、表層への彫りをすることで、陰影への感覚を養い、もう一度デザインから制作を学ぶ事により4年間かけて自分自身がイメージするジュエリーデザインがおぼろげながら見えたと言う感じです。

もちろん普通の人なら、こんな手間のかかる事をしなくても良いと僕は思いますし、どちらかと言うと自分が物覚えの悪い人間と自覚してましたので、普通の人の二倍の手間がかかったと言うのが僕の本音です。(^^ゞ



そしてプロの卵と成った以降は、卸屋に勤務と言う環境(※卸屋レベルの在庫)を活用して、とにかく現物の流通しているジュエリーを手にとって360度全体から見回し、サイズ直しや修理をする事により一つ一つのジュエリーの構造を学んで行き、ついでに仕入れ原価の勉強をし、そんな事を仕事を始めて10年間位は、一日軽く10時間以上働く事により蓄積して行きました。

そして独立後にエンドユーザー(※主に女性)と呼ばれる人達と本格的に接触し、5年間で修理などの細かな仕事を入れると1000人以上の人達と接し、業者さんからの外注を入れると1000件以上のリフォームやオーダーメイドと関わり、時にはデザインし、時にはデザインされたモノを作り、また発注したりしている間に自分の中でジュエリーとしてのデザインラインが固まって来ました(※これが良い事とは限りませんが…)。

で、1年半のブランクの後に彫金教室を始めた事によって、多少感覚をリセットし、それまでは学校でしか触った事がなかったシルバーを日常的に使用して制作したり制作の方法を教える事によりシルバーへの感覚を養い、またどちらかと言うといつも金欠な状態だったので、キャストなどを絡めた低予算で可能な制作ノウハウや広告宣伝法の蓄積も出来たと思います。またこの6年間の間に和彫りもある程度はマスターする事により、洋彫りでは困難だったアールの付いたリング面への彫りと彫り留めもある程度は理解出来ましたし、定期的にくるオーダーの仕事で宝飾の感覚もリマインドしつつ趣味から派生したシルバー製品(※チョークケース等)を考えたりもしました。

また最近に成り自分としては頭の中の引き出しがほぼ完成したと感じましたので、今後はあまり余分な情報を取り入れずに引き出しの整理をしながら、只々シンプルに「自分がデザインするべきモノをデザインし、作るべきモノを作る行為」に向かおうと思っております。ただし表現と言う意味では、まだまだ勉強しなければ成らない事も有り、ウエブデザインもそうですし、特に3D関連のソフトの勉強は、いずれ生徒に教える事も視野に入れてますので、僕にとっては重要課題だと思ってます。

そして20代にて宝石鑑定の勉強を始め、この業界に足を踏み入れて、そろそろ19年に成りますが、僕自身が不器用で物覚えの悪い人間(※立ち上がるのが人より遅い...)だったせいも有るとは思いますが、以前に東京に有る海外ブランドの宝石サロンの支配人と話をした時に僕自身の学歴と経歴をかいつまんで説明すると「そこまで勉強したりする必要が有るのですか?」と質問され「そこまでするからジュエリーなんだと思いますよ!(※生意気かな?)」と言った事を今思い出しました。(^^ゞ

で、19年間商業的ジュエリーに関わって来た身として最近ひしひしと感じている事は「デザインがジュエリーなどの装身具における最重要な項目だ」と言う事でして、卵(※デザイン)が優先か鶏(※制作技術)が優先か?なんて問いに答えは有りませんが、各々が自分の仕事の中に「デザイナー的要素を取り入れ」例えそれが直接ジュエリーデザインと関わりが無くても自分の仕事を自分でデザインする事により自分の中にデザイン能力と言う引き出しが現れるのだと僕は思いますデス(ふーーっ!)。


0.デザイン の 1.プロローグ 2.貴金属+宝石=? 3.に成る前に..
4.に必要な資質.. 5.何を考えて.. 6.の道のり.. 7.との出会い..
8.販売の魔力 9.環境の変化 10.状況に応じて 11.似合う臨界..
12.誰が為に.. 13.考える時.. 14.の引き出し.. 15.エピローグ

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